裏話⑥で、秩父の人々は夜祭の開催日を12月3日とし、それをかたくなに守り続けていることをお話ししました。では、なぜ12月3日なのでしょうか? 裏話①で、夜祭は「武甲山の男神と、秩父神社の女神(妙見様)が、年に一度御旅所(おたびしょ)で逢引きをする祭り」で、その意味は聖婚儀礼による五穀豊穣を願うものだとお話ししました。
少し話が変わりますが、農業にとって最も大切な自然は、太陽と水であることはおわかりいただけると思います。武甲山の西尾根の中腹に「大蛇窪(だいじゃくぼ)」と呼ばれる場所があります。ここは1年中水が湧き出しており、この水が伏流水となって秩父一帯をうるおしていると信じられてきました。この背後の尾根には武甲山「山の神」が祀ら

れています。この「山の神」と「大蛇窪」を結んだ線を延ばすと、そこには御旅所の「亀の子石」があり、さらにその先には秩父神社「柞(ははそ)の杜」があります。そして、この線は「北」を指し示しているのです。夜祭の主人公、秩父神社の「妙見様」は北辰(北極星)の神で宇宙不動の位置を示しています。また、亀は北方守護神の「玄武(げんぶ)」を表しています。このように、豊穣を願う神物が意図的に配置されているのです。(※写真は秩父神社から武甲山「山の神」方向を臨む。この線上に上記の点がならぶ)
12月3日の夜、北極星を指し示す「北斗七星」が空高く上り、聖婚儀礼を執り行います。このように、秩父夜祭は宇宙・自然の運行を体現する祭りですので、観光目的で開催日を変更することなどできないのです。
けっして秩父の人たちがアマノジャクだからではないことをご理解ください(笑)。
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