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『秩父路そぞろある記』ー秩父夜祭裏話⑪

 みなさんの中には「ユネスコの ” 世界遺産 ” 秩父夜祭」という紹介を耳にされた方もいらっしゃるのではないでしょうか。実はこれ・・・誤りです‼。正しくは「ユネスコの ” 無形文化遺産 ” に登録された秩父夜祭の屋台行事と神楽」です。「世界遺産」と「無形文化遺産」は、どちらもユネスコの事業ですが、

違うものです。ちなみに 「 ” 世界 ” 文化遺産 」 というものもありません。「ユネスコ無形文化遺産」と表記するより「肩書き」がいいからと勝手に日本のマスコミが付けた造語です。(※正しくは「Intangibul (無形) Cultural(文化) Heritage(遺産)」で、どこにも「World(世界)」の文字はありません。※上記ユネスコHP写真参照)

 前者は不動産を対象としてユネスコ世界遺産センターが行うのに対し、後者は無形の文化遺産を対象としてユネスコの文化局無形遺産課が行う事業です。

 現在、日本には「富岡製紙工場および絹産業遺産群」「富士山ー信仰と芸術の源泉」「知床」「小笠原諸島」など、「世界遺産」として14件が登録されています。一方、「無形文化遺産」には「和紙」「和食」「能楽」「歌舞伎」など、秩父夜祭を含めて22件が登録されています。

 実は、2011年に日本の文化庁は「秩父夜祭の屋台行事と神楽」「高山祭の屋台行事」をそれぞれユネスコの無形文化遺産へ申請しました。しかし、同じ種類のものを個別に複数登録はできないルールのため、2009年、先に登録されていた「京都祇園祭と山鉾行事」と同じ種類であるとの見解から見送られてしまいました。そこで、2016年、「京都祇園祭‥」に「秩父‥」「高山‥」を付け加えて「山・鉾・屋台行事」とし、拡大登録を申請して認められたのです。(※だから ” 日本三大曳山祭り ” と称している)

 最近は世界各国が観光客獲得を目的として「世界遺産」「無形文化遺産」への登録申請を行っているため、ユネスコでの保留案件が急増しているそうです。また、国境を接した国と国との間で、登録に関して互いの主張が衝突する事態も起こるようになってしまいました。一例として、スープ料理の一種に「ボルシチ」があります。「ボルシチ」はロシアとウクライナ両国から郷土料理として申請が出されていました。予定では今年(2022年)の11月に「無形文化財」登録のための政府間委員会が開催されることになっていましたが、ロシアによるウクライナ侵攻を受けて急遽7月に臨時委員会が開催され、「ボルシチ」は「ウクライナの郷土料理」として登録されることになりました。残念なことに「人類共通の価値ある自然や文化を後世に残そう」との理想から離れ、多分に政治的な側面が強くなってしまっているのです。近年、オリンピック招致のような申請のためのロビー活動も激しさを増しているそうです。祭りの意義を見失い、「祭り」=「経済活動」という考えが広まると「収益が上がらないなら(祭りを)止めてもかまわない」ということになってしまうのではないでしょうか。秩父夜祭がそのような道を歩まないことを願って止みません。

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